息子が学生だった頃、帰省した途端に交わす会話は「何が食べたい」「そうだなあ、グラタン」と決まっていました。息子の好物はグラタンなのです。私は、返事は予想できましたし云われなくてもグラタンを作ってあげようと準備をしていました。肥満の息子ですから、ルーは手作りです。少々時間はかかりますが息子の健康面を第一に考え、低カロリーでもおいしいグラタンを、心を込めて作ります。息子がいないときには簡単にささっと作りますが、味の分かる息子に食べさせる時には材料から吟味します。
息子の臭覚と味覚は抜群です。小さい頃から「玄関の戸を開けた瞬間に何を作っているのか分かる」と言っていたのです。また、普段の味とちょっと違っても「何か入っている」と言って臭いをかぎ分けたり味を確認したりして、隠し味に使った物をズバリと当てたりもしました。そういう息子ですからやはりごまかしはできません。おいしいグラタンを作るために入れる材料もちょっぴり贅沢をして、やっぱり息子の好物はグラタンだと納得させるのです。息子は満足げ。
中身や作り方を確認したりとろみ具合を評価したりしながら楽しんで食べます。極めつけは「俺にはこの味が出せないんだよなっ」と。この言葉を聞きたいために私は張り切るようなもの。何でも「うまい、うまい」とむしゃむしゃ食べ終わる夫とは違って、息子は料理の話等をしながら食べるので楽しい時間です。息子の好物はグラタンですが、ハンバーグやシチューの材料も冷蔵庫の中にばっちり用意してあります。せめて帰省している間だけでもお袋の味を楽しんで欲しいために。